まさか社会人になって古代ギリシャにはまり、しかも英語も中途半端であるのに、古典ギリシャ語を学ぶようになるとは、つい2年前までは考えられませんでした。
私が古代ギリシャにはまったきっかけは、本当に偶然で、なんら計画されたものではありません。人生なんて全てそうなのでしょう。
平成25年の秋ころですが、仕事の合間、近くの本屋へ行ったときでした。仕事で少々疲れていたこともあり、少し自分を見つめ直したいという気持ちもあり、言わば本から何か新鮮な刺激を受けることを期待していました。
本屋に着くと、あまりにもおびただしい本が並んでいる。
こんなに世の中に本が必要なのか?たかだか80年の人生、いや、寿命的にはたかだか50年しかないのに、こんなに読み切れるはずがない!そう思って足を向けたのは、岩波文庫のコーナーでした。
どこかで、迷ったら岩波文庫の本を読めばいいと聞いたことがあります。岩波文庫は読むに値する人類の遺産ともいうべき本しか置いていないからです。ですから、何か読むに値するものを読みたいと思えば、その中から自分の興味が湧きそうなものを読めばいいのだと思います。
そして、私がその時にたまたま手に取ったのが、ヘロドトスの「歴史」。
ヘロドトスの名はどこかで聞いたことがある程度で、それに記載されている内容についてはよく知りませんでした。
目次を見てみました。その章立てをみると、「第1章」に当たるはずのところが、「クレイオの巻」。
ク、レ、イ、オ、、、、、!!!??!?
今ではギリシャ神話のゼウスの娘たちであるムーサイの一人であることは分かりますが(英語のMUSICやMUSEUMの語源)、この出だしの可笑しさから興味が湧き、自分の知らない豊かな世界がそこに広がっていることを直感しました。そして、とりあえずその上巻を読んでみることにしたのです。
そこに書かれていたのは、紀元前500年より前の歴史。小アジアのハリカルナッソス出身のギリシャ人ヘロドトスからみた、当時の小アジア地方、エジプト、そしてギリシャの風習でした。そして、ギリシャ神話の英雄に次ぐ英雄を生んだペルシャ戦争へと筆を進め、その戦況を迫真さをもって綴っています。民族、ポリス、制度、そして個々の魅力あふれる人間たち。
豊かな世界がそこにある。
私は人生をそれに費やすだけの価値があると確信しました。そして、古代ギリシャをやるなら、古代ギリシャでしゃべられていた言語も学びたいと思いました。その結果、今は、古典ギリシャ語に目下夢中です。2500年も前に使われていた言葉を、遠く離れた時代と場所にある現代日本で学ぶだなんて、なんか素敵じゃありませんか。
古典ギリシャ語で様々な原書を読み、人間の本質に触れていくこと。それが今の私の喜びになっています。